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Evidence Level: High

「噛める歯の数(咀嚼機能)」が多いほど高血圧リスクが18%低下、そのメカニズムの約2割は良好な血糖コントロール(HbA1cの低下)によって媒介されているとの最新疫学データ

「しっかり噛めること」が単なる栄養摂取の補助にとどまらず、糖代謝の改善を通じた血管ダメージの軽減に直結し、結果として高血圧リスクを有意に押し下げるという精緻な生物学的カスケードが米国の大規模データ解析から判明しました。

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MoguExercise Team

高齢化に伴う歯牙の欠損や軟食化によって生じる「咀嚼機能の低下」が、局所的な口腔内の問題にとどまらず、高血圧や糖尿病などの全身的な心血管リスクを増大させる共通の上流要因として機能していることが、米国の大規模疫学データを用いた最新の解析によって実証されました。特に、咀嚼可能な歯の数が多いグループは、そうでないグループと比較して高血圧の発生リスクが18%低く、そのリスク低下幅のうち実に18.0%分が「HbA1c(糖化ヘモグロビン)の改善」という代謝経路によって説明可能であるとのことです。

本研究の中心となる「咀嚼機能と高血圧の関連性におけるHbA1cの媒介効果」についての詳細は、報道要約および関連論文資料にて確認可能です。

咀嚼機能の向上が高血圧リスクを18%低下、HbA1cが媒介 | CareNet Academia https://academia.carenet.com/share/news/a377fcdc-2687-4931-8b0b-22f4be6ac4dd

咀嚼機能(FTUs)のスコアと高血圧の明確な負の相関

同研究は、米国国民健康栄養調査(NHANES)の2005年から2018年までの膨大なデータセットを用いて、成人を対象とした観察研究として実施されました。

解析においては、個人の咀嚼能力を客観的に定量化する指標として「機能的歯牙単位(Functional Tooth Units: FTUs)」が採用されています。FTUsとは、上下の顎で正しくかみ合っている(対合する)小臼歯および大臼歯のペア数をカウントしたものであり、実際に食物を物理的にすり潰す能力をダイレクトに反映します。

FTUsのスコアに基づき対象者を「最適な咀嚼機能(10〜12単位)」から「著しく低下した咀嚼機能(3単位未満)」まで分類し、高血圧の有病率との関連を検証した結果、以下の傾向が強く確認されました。

  • 交絡因子(年齢、性別、喫煙歴、BMIなど)を調整した後でも、最適な咀嚼機能を維持している群は、低下群と比較して高血圧の調整オッズ比が0.82となった。
  • すなわち、十分にものを噛める正常な口腔機能を有するだけで、高血圧リスクが全体として18%有意に低下していることが統計学的に立証された。

糖代謝(HbA1c)が血圧調整を「媒介」する仕組み

さらに研究チームは、咀嚼機能の高さがなぜ直接的に血圧を引き下げるのかというメカニズムを解明するために、「媒介分析(Mediation Analysis)」と呼ばれる統計手法を適用しました。

その結果明らかになったのが、「咀嚼介入による糖代謝の改善が、血管内皮の弾力性を担保する」という生物学的カスケードの存在です。

  • 咀嚼と糖代謝のリンク: 前述の通り、固形物をよく噛むことで消化管からのGLP-1分泌が促され、インスリン初期分泌が高まることで食後の血糖値推移が安定化します。これにより、血液中の過剰な糖分が赤血球のヘモグロビンと結合して生じる「HbA1c」の慢性的な蓄積が抑制されます。
  • 血管内皮機能への波及: 慢性的な高血糖(高いHbA1c)は、血管の内皮細胞に直接的なダメージ(糖化ストレス・AGEsの蓄積)を与え、血管を硬化させます。逆に言えば、咀嚼によって血糖コントロールが良好に維持されることは、血管の弾力性が失われるのを防ぐ強力な防御壁となります。
  • 媒介効果の割合: 本研究の解析モデルによれば、咀嚼機能が最適な群における高血圧リスク低下(総効果)のうち、「18.0%」はHbA1cなどの代謝経路を介した間接効果(媒介効果)によって直接的に説明されることが示されました。

全身的な心血管疾患予防へのアプローチ

これらの知見は、歯科的・口腔的なケア(義歯やインプラントによる咬合の回復を含む)や、日常の食生活で意識的に噛む回数を増やすという「咀嚼への介入」が、単に消化を助けるため以上の意味を持つことを示唆しています。

咀嚼回数の維持・増加は、薬物療法に依存せずに日々の血糖スパイクを抑制し、ひいては高血圧や動脈硬化といった致命的な心血管疾患イベントを未然に防ぐための、非常に安全かつ費用対効果の高い「全身的代謝・循環管理のアンチエイジング戦略」として臨床的に推奨される結論に達しています。

この記事の科学的根拠(参考文献)

咀嚼機能の向上が高血圧リスクを18%低下、HbA1cが媒介

CareNet Academia (2026)

Published in: CareNet

Reference Summary

機能的歯牙単位(FTUs)を用いて咀嚼機能と高血圧の関係をNHANESデータを用いて解析。咀嚼機能が最適な群は低機能群に比べて高血圧リスクが低く、この関係の18.0%をHbA1cという代謝指標が媒介(説明)していることを報告した研究。

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